最近,塾生たちの進路について考えることがよくあります。「願わなければ何も叶わない」という考えから,塾生たちには,「早く『やりたいこと』や『なりたい職業』を見つけなさい。そのためにまず,自分から調べに動きなさい」とよく言っているのですが,そのことに関して世間に流布しているある考え方について僕は考えてしまうことが多いのです。
それは,「好きなことだけやればよい」という考え方です。
確かに「好きこそものの上手なれ」で,好きになればなるほど物事は上達します。そして,いわゆる成功した人は異口同音に「好きなことだから今まで続けられた」と述べています。しかし,本当に好きなことだけやっていて良いのでしょうか?他に大切な要素はないのでしょうか?僕はそんなに簡単なことではないと考えています。
成功者が各々好きなことを見つけ出し,それに自分の人生を賭けたのは間違いないでしょう。しかし,それを「好きなこと=楽しいこと」と単純にとらえてしまうのはあまりにも危ういのではとどうしても思ってしまうのです。成功者のほとんどは「好きなことをやりなさい」と一緒に,「好きなことなら我慢できる」とも述べています。つまり,「好きなことをしていても,残念ながら我慢は避けて通れない」のです。
ところが,塾生と話をしていて感じるのは,「好きなこと,やりたいこと」を「好きな食べ物」や「好きなアーティスト」等と同列にとらえているということです。確かに,「好きな食べ物」に我慢の要素はありません。我慢をして食べるくらいなら,すでにその食べ物は「嫌いな食べ物」となります。しかし,それと自分が人生を通じてかかわるような「好きなこと,やりたいこと」とは決定的に違うのです。
この仕事をしていていつも感じることは,「子供の可能性はやはりすごい」ということです。大人が何年もかけてする成長を子供はほんの2・3ヶ月であっさりやってのけてしまいます。見ていて驚くばかりです。しかし,そういった成長を可能にするのは,「好きである」という要素だけでなく「必要だから我慢してやる」という要素なのだと思います。すなわち,「好きで始めたことであっても必ず苦しくなることがあるのだから,それを打破するのは『自分に必要なことを我慢してやり続ける能力』である」ということです。
ある意味においては,将来やりたいことが見つからなかったとしても,上記の「自分に必要なことを必要な分だけ我慢してやり遂げる能力」さえあれば何とでもなると僕には思えます。逆に好きなことを好きなようにしか取り組めない人間には,逆境を乗り越えることはおろか自分に不都合だという程度のことさえ嫌悪し,真面目に取り組まないような気がします。「初めから終わりまで好きだけで通せるようなこと」なんて世の中にあると僕には思えません。
一番良いのは,おそらく「自分が我慢していると気付かないくらい大好きなことを見つけること」なのでしょう。ただし,それを見つけられるのはあくまで「自分から見つけ出そうとし続ける人間」に限られてしまいますが…。でも,塾生のみんなにはそうあってもらいたいです。自分の人生は全て自分が責任をもたねばならないのですから。
〈今週のMVP〉
今週は高校2年の田中莉恵さんです。田中さんは最近英語が絶好調で,センター試験対策問題において先週は188点を,そして今週は191点と高得点をマークしました。来週以降もさらに調子を上げていってくださいね。
来週は定期試験直前なので,中1・中2生の中から選ばれることを期待しています。
