No.132 H18.6.17

 しばらく書いていなかったので、今週はまた『心と体と頭』について書いてみたいと思います。

 僕が「人間というものは『心』と『体』と『頭』から成り立っていてどれか一つが欠けても上手くいかないものだ」と考えているのは皆さんもご存知だと思います。例えば、村上ファンドの村上さんは極端に『頭』ばかりが進みすぎて、『心』と『体』とのバランスを失した、というように考えます。この3要素で世の中を見ていくと様々なことが結構わかってきます。

 ただ今回はまた同じような話をしても仕方ないので、3要素のうちの『体』に初めてスポットを当ててみたいと思います。

 勉強を教えることを職業としている僕にとっては、3要素のうちの『体』という要素が最も遠い存在になりがちです。『頭』は当然のことながら、指導者として『心』にも常に留意していかなければならないので、どうしても『体』というものの存在感は薄れていきます。しかし、勉強することにおいて「『体』を上手く活用するかしないか」というのは大きな違いとなって表れると僕は思っています。

 例えば、「こんなに多くの漢字を覚えられない」とすぐに文句を言い始める生徒がどの学年にもいますが、そういう生徒に限って、「実際に書いて覚える」という『体』を使った勉強をしていません。教科書やプリントで漢字をただながめるだけで「覚えられるわけない」と言い出します。体を上手く使った経験がないのです。

 同様に、「こんなにたくさんの英単語を覚えるのは無理」と言い切る生徒も多々います。しかし、そういう生徒はその単語の発音さえも出来ずに(調べてみようともせずに)、また書いて覚えようともせずに、「自分には無理」と決めてしまいます。せっかくの体がもったいないです。

 僕自身は受験の頃、単語にしても漢字にしても社会や理科の用語にしても、「1日に最低ボールペン1本がつぶれるまで書きまくる」と決めていました。そして実際に覚えられました。それは覚えるというよりも、何回も何十回も何百回も書くことで、「体に刻み込む」ということなのです。

 僕自身振り返ってみて、受験勉強で得たものは「勉強ができるようになったこと」などよりも「体を上手く利用できるようになったこと」のような気がしてなりません。言い換えると、「受験で得た知識」よりも「受験勉強を通じて得た『体の使い方』」の方が僕の人生に役立ったように思えるのです。「身に付く」という使い古された言葉もより理解できるような気がします。

 そう考えると、「単語が覚えられない」と言って何も書いてみようとしない生徒と「どうせ自分にはできない」といって何も自分からは行動しない大人がダブって見えて仕方ありません。

 確かに『頭』は大切です。『心』も大切です。しかし、同じくらい『体』だって大切なのです。ですから、勉強だからといって『頭』だけで対処しようとせずに、上手く『体』も使ってほしいというのが僕の願いです。

 とにかく理屈ぬきで『体』を使ってほしい。『頭』ばかりで勝負せずに、『体』も武器にしてほしい。『体』゛がともなった勉強は、将来必ず活きる時がきます。そのことを正しく理解した生徒たちにこそ扉は開きます。

〈今週のMVP〉

 今週のMVPは中3クラスの佐藤実弥子さんです。修学旅行から帰ってきたその日、授業がないのにもかかわらず定期試験の勉強をしに来ました。疲れている体に鞭打って、「何としても頑張ろう」という強い意志を感じました。そんな頑張り屋さんに今週はMVPを送りたいと思います。