今夏の甲子園は実に見所の多い大会となりました。中でも決勝で延長15回引き分けとなり、再試合で雌雄を決した駒大苫小牧と早稲田実業の死闘は、高校球史に残る大激戦となりました。野球好きの僕を心から楽しませてくれた両校の選手には感謝の思いでいっぱいなのですが、その名勝負の勝敗のポイントが実は塾生の成績アップに直結する要素とかなり重複するように思えたので、今回はそのポイントを取り上げたいと思います。
決勝再試合が駒苫の田中君にとって6試合目であり、かつ他の2投手とともに投げてきたのに対し、早実の斉藤君は7試合目で、さらにほとんど一人で投げ抜いてきたのでした。二人が投げた投球数も100球以上斉藤君の方が多かったのです。しかし、決勝再試合での調子は疲れているはずの斉藤君の方がはるかに上でした。田中君の初回のボールよりも斉藤君の最終回のボールの方がスピード・キレ共に数段上でした。ちまたでは「田中君よりも斉藤君の方がスタミナで上回っていた」という解釈が一般的なようですが、僕はそう思いません。実際にスタミナ面ではそれほどの差はなかったと思います。では何が二人を分けたのか。それは、二人の投球に対する「頭の使い方の違い」にあったのだと思います。
田中君は完全な「力投型」です。一球一球全力で投げるタイプで、ボールそのものの力で抑えるのです。ピッチャーに最も多いタイプと言えます。ところが、斉藤君は力投するどころかむしろ力を抜いて丁寧に投げていました。いわゆる「頭脳派」のピッチャーです。彼は力を入れることよりも、一球一球に意味を持たせ、コントロールを重視して投球していました。つまり、ボールそのもので抑えるのではなく、「頭」でバッターを牛耳ったのです。
斉藤君を初めて見たのは2回戦なのですが、彼の投球を見るやいなや「駒苫が負けるとしたらこのピッチャーだな」と確信しました。残念ながらその予想は当たってしまい駒苫の3連覇は阻まれてしまったわけですが、一目見て分かるほど彼の投球術は抜きん出ていました。実際にこの10年間ほどで「頭」を使っているなとおもわされた投手は斉藤君以外には一人もいませんでした。甲子園でもほとんど全員が「ただ単に精一杯投げているだけ」だったのです。したがって、甲子園というまさに全国レベルのスポーツ大会でも、「頭」を使える者が勝つのだと言えます。
繰り返しますが、駒大苫小牧は早稲田実業の監督にも選手たちにも負けていません。斉藤君の「頭脳」に屈したのです。
野球でさえそうなのだから、純粋に頭の勝負である勉強ではさらに「頭」を使った物が勝つのは言うまでもありません。しかし、僕から見て「この生徒は本当に頭を使っているな」という生徒は現塾生の中にも2・3名しかいません。それどころか、「頭を使うのは面倒くさい」というような態度で勉強に取り組んでいる生徒の方が多数いるほどです。これほどくだらない話もありません。「頭」を使わなければ伸びていかない勉強なのに「頭」を使おうとしないのですから。
結局、「勉強が本当に出来るようになりたい」と言うのなら、まず「頭を使うことが当たり前に出来る人間になりなさい」というのが今回の結論です。したがって、厳しい言い方ですが、「本当に頭を使う気がない人間の頭が良くなるはずがない」のです。でも、これも当たり前の話だと僕は思うのですが…。
〈今週のMVP〉
2学期が始まったばかりで、まだ本格的な授業が始まっていません。したがって、今回は該当者なしとさせていただきます。次回に期待したいと思います。