No.143 H18.9.16

 14日付け道新の朝刊一面トップに「高卒求人倍率1倍越す」という記事が載っていました。正確には1.14倍で、それは「高校生1人に対して1.14社が募集している」という意味となり、選ばなければ誰でも就職できるということになります。やはり、「全国的に景気は改善されている」らしいのです。特に、東京都は4.41倍と驚異的な高倍率となり、誰でも4社の中から1社を選べるというような好条件となっているようです。

 しかし、北海道では残念ながら0.29倍です。つまり、「10人のうち3人弱しか就職できない」のです。全国平均との格差は広がるばかりです。北海道はやはり景気が悪いのですね。

 でも僕が言いたいのは、そんなありふれたことではありません。そうではなく、「今起こっていることをきちんと把握しなければならない」ということです。

 というのも、「全国的に就職率が上がっている」というのにはカラクリがあるからです。実は、現時点で求人倍率が上がっているのは「契約社員」を入れての数字なのです。ご存知の通り、契約社員とは「会社と毎年契約を交わす社員」であり、仕事に就けるだけで何の安定もありません。ボーナスもありません。会社として必要な時に入社してもらい、要らなくなったらポイ捨てできる「都合のいい人材」なのです。要するに、確かに求人倍率は上がってはいるけれども、その中身はほとんど契約社員で、肝心の正社員の数は減っているという事実を知らなければ現状を正しく把握することはできないのです。結局、道外でも「本当の意味で」景気が改善された訳ではないのですね。

 したがって、そのような状況下でも0.29倍という低い倍率の北海道はどうしようもない状態なのです。北海道の人が思っているより圧倒的にひどいというのが実のところです。僕の感覚では「希望する職種はほぼあきらめざるを得ない」というような状況だと思います。「就職氷河期」どころの騒ぎではありません。壊滅状態です。

 でも、それを把握することから始めるしか手立てがないのもまた事実です。「見たくない現実」から目を背けていては、いつまでたっても状況は把握できません。腐っている食べ物にふたをしても、そのふたの下で食べ物はさらに腐り続けるだけです。ですから、大切なことは「そのような北海道でも生き抜けるだけの実力を身に付ける」か「北海道を脱出し、比較的景気はいいが競争の激しい道外でたくましく生き抜く」かのどちらかを選択することなのです。

 僕の本音としては、どちらでも構わないと思います。ただ、北海道人特有の「のんびり気質」からは何も生まれないことだけは事実です。東京にいる僕の教え子たちからでさえ「いい就職を考えたら今でもやっぱり厳しいよ」という返事しか返ってこないのですから。

 もう一度書きます。「見たくない現実」を見ることから始めましょう。そして、「自分の人生は自分が切り拓かない限りどうにもならない」という厳然たる事実を受け容れましょう。残念ながら、その先にしか「未来」は描けません。