No.97 H17.9.10

いくつかの公立中高でいよいよ定期試験が始まりました。今回も塾生のみんなは勉強に精一杯取り組んでくれているのですが,今回は「その先の世界」について書いてみたいと思います。

開校以来,僕はこの欄で「精一杯頑張ることの大切さ」を書き続けてきました。もうそれこそ3週に2回くらいのペースで様々な角度から伝え続けてきたように思います。その甲斐あってか,最近は塾生も逐一言われなくても頑張れるようになってきたように思います。頑張るということがスタンダードとなった感さえあります。僕自身それを目標としてきたので,今の状況には「やってきたことは間違っていなかった」と実感できます。しかし,今の状況が僕のそして創優会の最終目標ではありません。それどころか,実は目標に向けての手段に過ぎないとさえ言えるのです。では,その最終目標とは何か?それは,「塾生全員が人間的に大いなる成長を遂げること」です。

生徒に勉強を教えることを職業としてきた僕ですが,単に勉強ができるようになることには実はさほど魅力を感じません。なぜなら,それは一過性の薄っぺらなものに過ぎないからです。

例えば,英語の中で「現在完了」という単元だけできるようになってももちろん英語を話せる訳でも書ける訳でもありませんし,時間が経てばおそらくその現在完了さえも忘れてしまうでしょう。つまり,勉強ができるようになるというのは極めて表面的なものなのです。では,どういう勉強がよいのでしょうか?それは,「現在完了」を習えばそれを徹底的に学習し尽くし,また次の単元を習ってもまたまた次の単元を習ってもその単元の習得はもちろん過去の単元である「現在完了」も自発的に度々復習するという,極めて自分主導であり持続的な勉強以外にはありません。確かに,塾が教える解法テクニックや短期集中的な学習で成績を伸ばすことも可能でしょう。しかし,自分主導で持続的な勉強の足元にも及ばないと僕は考えます。単に勉強していない人より伸びるだけの話でしょう。

今この文章を読まれている方にもその勉強がいかに理想的かはわかっていただけるかと思います。ただ,「それはわかっているけれども難しい」と感じられているのではないでしょうか。確かにその通りです。まさにその通りです。でもだからこそ,それを身につけられた人間はより高みへと行けると僕は思うのです。誰でも身につけられる方法などに本物はありません。それは誰でも入学できる学校や誰でも入社できる会社にいいものがないのと同様です。しかしだからこそ,そうであるからこそ,僕はそれを実現したいと思うのです。そしてそのためには,「人間的な成長」が不可欠なのです。

価値観が多用し,様々な人が様々な形で人生を送っています。その中には以前では考えもつかなかった形で富や成功を得た人も多数いらっしゃいます。ライブドアの堀江社長はその最たる例でしょう。しかし,僕は思うのです。「本当に価値観は多様化しているのだろうか」と。「多様化しているのは価値観ではなく,その表面部分だけで,その内側にある人間の本質に根ざしたものはなんら変わっていないのではなかろうか」と。そして,「変わったと言っているのは,自分のやり方が人の道からそれたものであるのに気付かせないための方便に過ぎないのではないか」と。

子供たちは混迷を極めるこれからの時代の中で「世の中」にデビューします。その子供たちに伝えられる確かなもの,時代が変わっても仮に日本という国が亡くなってもよりどころにできる確かなものは何でしょうか。僕は「人間的にどれだけ成長できるかを常に判断の中心に置き,実行し続けなさい。そうすれば何があっても大丈夫だ」という事を塾生に伝えたいと思います。そして,「つらい方苦しい方が人間的成長につながり,楽な方には何もない」と付け加えます。後は,自分の頭で考えてもらうだけです。

お金を手に入れた者は「その先には何もない」ということに早晩気付きます。しかし,人間的成長に終わりなどありません。ただ自らの成長を自ら祝福し,またその喜びを得るために研鑽を続けるだけです。人はどれだけ磨かれたとしても完成からはほど遠いのだと思います。僕はそのことを子供たちに伝えたくて創優会という場を創りました。そして,塾生たちの成長を何よりの喜びとして日々過ごしています。

結局,僕は生徒たちに「心の伴わない人間」になってほしくないのです。いくら運動ができたって,いくら頭が良くたって,心が脆弱な人間にはそれ相応の人生しか待っていません。でも残念ながら,そんな大人はたくさんいます。だから,まずそういう価値観が間違っているということを伝えたくて,「精一杯頑張れるようになりなさい」と言い続けてきたのです。義務を果たさないで権利ばかり主張する大人たちがはびこっているこの世の中で,自分の信念をしっかり抱いて生きていけるように,僕は生徒たちにまず「最善をつくすことの重要性」を説いてきたのです。

塾生全員が受験の合格はもちろんのこと,人間としてたくましく成長し,どんな世界の中でも生き抜いていける力を手に入れられるように,創優会はこれからも尽力していきたいと思います。長い文章でしたが最後まで読んでいただきありがとうございました。心から感謝いたします。